「破れ傘刀舟」「破れ奉行」に続く錦之介主演のシリーズ第三弾。今回も「破れ奉行」に続いて、悪党退治をする集団ものだが、設定は「破れ傘刀舟」に戻ってシンプルに。企画時のタイトルは、「真夜中の軍団」。新九郎は親子代々の獣医。父親の代はどこかの藩に馬医としてつかえていたらしい。ある日榎辰長屋に住み着き「よろず医者。但し人間おことわり」の看板を掲げる。腕は抜群。治療費はデタラメ。金持ちのペットがくれば目の玉飛び出しそうな大金を巻き上げる。長屋の男の子が持ち込んだ兎の治療費は只という調子。正義感が強く、何かやり出すとトコトンやり、困った人、いじめられている人間を黙って見ていられないタチ。剣の達人であり、恐ろしく実践的な拳法の名人。この医者が正義のためにあらゆる事件を解決してゆく。長年、テレビ作品を手がけて来なかった沢島忠監督の初めてのテレビ監督作品。沢島監督は後年、自作を振り返った中で本作についても触れている。「テレビは最初は、錦兄がどうしてもやってくれというので、『破れ新九郎』（1978年、テレビ朝日）の第一話だけやったんです。それから『赤穂浪士』（1979年、テレビ朝日）です。最初の「殿中松の廊下」から、赤穂へ知らせが行くって。大石が知るまでを一、二話で撮った。それから城明け渡しを二本撮った。それから最後の「南部坂雪の別れ」から「吉良邸へ討ち入り」で飛び込むまでを撮りました。それでまあ、錦兄との約束を三分の一ぐらい果たしたなという所ですね。『それからの武蔵』（1981年１月、テレビ東京）というのをやりました。これは十二時間ドラマの最初のやつです。これもはじめの一話二計と真中の二話そしてラスト武蔵の最期を監督しました。武蔵の最期。死ぬところを撮りました。これ以外テレビはやってません。もっときっちり撮るんでしたらやりたい。だから、最初の一、二話とかね。ああいうのはがっちりやれますから、やりましたけど。みんなは、「テレビ撮る時はこうして早く撮るけれど、本篇（映画）撮る時はちゃんとやる」って言ってるけども、テレビばっかり撮ってたのが映画撮ると、もうひどいのになってます。これは、馴れというものはなかなかもとにもどらない。人間ってのはそうなれないんですよ。だから僕はいましめとしてやってこなかった。脚本のほうもありません。【この項、書籍「沢島忠全仕事 ボンゆっくり落ちやいね」（著：澤島 忠、2001/06/02第１刷、ワイズ出版刊）より引用】」協力：生田スタジオ。【各回サブタイトル】第２回「えん魔がくれた千両箱」、第４回「ここは地獄の一丁目」、第６回「地獄の白州は快刀乱麻！」、第７回「通り雨ならお命頂戴」、第10回「新九郎、西伊豆へ走る（後）」、第12回「血風！帰らざる街道」、第14回「罠！死美人は知っていた…」（1979/01/09放送）、第15回「盗人宿の女」、第17回「必殺！無双一本槍」、第18回「血涙・地獄の子連れ狼」、第20回「殴り込み！破れ軍団」、第24回「六十二万石の鯉騒動」。【役名（演技者）】クメ（津路清子）。【参考資料：書籍「日本タレント名鑑'81」（1980/12/30、VIPタイムズ社発行）［大沢萬之介・小泉比蕗子の項］】