NHK芸能局長賞受賞作品。深町幸男が制作当時のことを後年回顧している。「父親と息子の話です。この作品では、オーディションで、私が「いいじゃないか」と判断して、主役に決まった男の子が、全然しゃべれなかったのです。緊張もあったのでしょうが、撮影開始のカチンコが鳴ってもしゃべれない。結局役から降りてもらいましたが、マネージャーと一緒にバス停留所に立っていた少年が、バスが来て、すっといなくなるのを見たときの悲しみを忘れません。今の私だったら、「いいんだよ、今日は撮影中止にしちゃおう」などと言ってほかの場面を撮影し、その間そばにおいて、勉強のために見させてあげたりするとか、いろいろなコツがわかっていますが、そのときは、その少年への力が及ばなかったのです。【この項、深町幸男「ドラマづくりは阿吽の呼吸」（「放送研究と調査」（NHK放送文化研究所刊）2009/08月号掲載）より引用】」