巨大組織の華道流派を舞台に、色と欲の野望のうずまく黒い世界に挑んだ異色作。放送当時、早坂暁は本作について語っている。「生け花の世界を背景にした家元制度の話です。家元というのは、才能ではなく血で継いでいく、いわば小さな天皇制です。しかし、家元よりはるかに才能のある人間が次の家元になりたいと思うのは当然でしょう。血がつながらなくて継ごうとしたらどうなるのか、それを企んだ男がいて、ある娼婦を拾ってきて、家元夫人にさせ、自分の子供を生ませる。家元は自分の子だと思い込んでいる……というサスペンス仕立てのドラマです。生け花でも歌舞伎でも、伝統の型を伝承していくのが大事なんで、家元に能力がないとか馬鹿だとかいってもはじまらない。それは血で守らない限り散逸してしまう。そのまま次へ渡していく人間がいない限り伝統は守れない。生け花だって盛んな時代ばかりでなくて、むしろ苦しい時代のほうが多かった。そういう時代のほうが多かった。そういう時代でも伝統を守っていくのが家元で、そのことを書いたわけです。【この項、談：早坂暁（「月刊ドラマ」（映人社刊）1985/05月号より引用）】」