演出の野崎元晴氏は語る。「開局２年目だったか、土曜日の８時にポッカリと60分の空時間が出来た。これ幸いと『大人は判ってくれない』というドラマ企画を出したら通ってしまった。最初の１時間ドラマだった。脚本、岡田達門。出演は、最初東映の中原ひとみさんと交渉、本人の了解を得たにもかかわらず東映の横ヤリでご破算となり、急遽、安西郷子さんに変更、助演に飯田蝶子さん、高杉早苗さんらのベテランでかためた。安西さんはテレビ出演が初めてどころか、テレビそのものを見ていない。テレビドラマというものが、ぜんぜんお判りになっていなかった。映画と同じくNGは出せるもの、セリフは全部覚えなくてもよいものと思っていたらしい。飯田蝶子さんにテレビのセリフは全部暗記しなければダメよ、NGは出せないのよ、といわれ真っ青になり、本番３日前に降りたいと云いだす。そこをなだめすかして、本番に突入。だが、そこで大事件が起こった。テレビの経験のない高杉早苗さんが何を取り違えたか突如としてカメラのいないセットでセリフをしゃべり始めて大騒動。何しろ生本番だ。なんだかんだとつくろってやっと本番終了。しかし、１時間ドラマが45分で終わってしまった。放送当日の朝提供が決まったドラマのスポンサーからお咎めはなかったものの、この直後、９時から放送のニュースが８時45分から流れて、定時の９時には終わってしまい、ニュースのスポンサーからは大目玉を喰らった。この失敗で私はその後ドラマのディレクターはやらせてもらえなかった。【この項、「民放くらぶ」第78号（2005/06発行）より引用】」。【参考文献：「民放くらぶ」第78号（2005/06発行）】