作家・獅子文六の未亡人、岩田幸子さんが、その半生を綴った「笛吹き天女」をもとに、老作家と年の離れた夫人の、おかしくもほのぼのとした愛情物語を描く。小説家の佐々軍六こと岩佐東吉（森繁久彌）は、妻を亡くして長いやもめ暮らし。家には婚期を逸しかけている娘の麻里（かとうかずこ）もいるが、仕事をもっているため、身の回りの世話はお手伝いまかせにしていた。東吉の気がかりは、やはり娘の結婚だ。本人は婚期の遅れに動じる様子もないが、東吉はなんとか早く片づけたいと、さかんに縁談をすすめる。そんな父親の熱意に音を上げた麻里は、ある日、商社マンの直昭（三浦友和）を恋人に仕立てて、湘南の家につれてきた。ところが日頃はケンカ相手の直昭は、ウソをつくのに疲れて、ひとりで酔いつぶれてしまう。そんな事件のあったあと、麻里の店に元華族の令嬢という幸子（多岐川裕美）が仕事を探しにやってきた。本物のお姫様で、世間ばなれした幸子は、どうにか採用になったが、それが縁で東吉の結婚相手になろうとは…。【以上、「テレパル」（小学館刊）1988/05/28号より引用】1987年末、腸閉塞で入院した森繁久彌が復帰した作品。