伝統芸術の世界を描いて定評のあるMBSが、またまた陶芸界をドラマに引き込み、窯元の妻として因習の中にあやしく生きる若く美しい女の〝光と影〟を追う。京都、芥焼の窯元である清月（池部良）は半身不随だった。そんな夫のために真紀（岩下志麻）は笑顔を見せて得意先を回らなければならない。好奇に満ちた世間の目が彼女を包むが、そんなことには、かまっていられない真紀だった。清月の作品をひいきにする東洋コンツェルンの会長・東洋太郎（山村聡）と孫娘の綾子（由美かおる）が京都に現れ、偶然から真紀の弟・俊作（森田健作）と知り合う。一方、清月の内弟子・佐吉（田村正和）は、妄想から妻を責める清月夫妻の夜の生活を知って、さらに表情に影をきざむ……。清月の異常なドラマ設定が、連続ドラマ第一作に通常みられる冗舌を救っているし、清月と佐吉につきまとう暗調を、陰影濃く演技する池部と田村が、むしろ〝重み〟に転化しているのは、二人の好演とともに財前定生プロデューサーの手腕といえよう。次回以降に期待が寄せられる。【以上、毎日新聞1976/01/07付「視聴室」より引用（署名：石）】VTR作品。【参考資料：新聞「毎日新聞」1976/01/07付、書籍「松竹百年史　映像資料・各種資料・年表」（1996/01/22、松竹刊）】