別れた夫・哲夫にいつまでも未練を残す妻・浅子の物語。脚本の西条道彦氏は自著で本作について記している。「ぐうたらで女ぐせの悪い亭主に愛想をつかして離婚したものの、やはり夫が忘れられずに何かとつくしてしまう女の哀れさ、かわいさを描くコメディーである。浅子（江利チエミ）は哲夫（中村賀津雄）との三年間の結婚生活に終止符をうち、二ヵ月前に離婚。逃げるようにして下町で中華料理店をいとなむ実家に帰り、店の手伝いにはげんでいた。ところが二人は町でばったり再会。動揺する浅子に哲夫はずうずうしく復縁をせまる。マジメ人間との再婚話があるのに、自分でも悲しくなるほど情にもろい浅子である。洋服代や食事代をせしめる哲夫を放っておけなくて……。と、これは織田作之助の「夫婦善哉」のパターンを意識して書いたが、職業は無職と中華料理店の手伝いということで、大事なのは二人の性格（キャラクター）をどこまでほほえましく、愛すべき人物として描きこめるかが勝負という作品であった。原作に田辺さん一流の女の魅力があったので、中村さんの＜ダメ男の悲哀＞に力をいれたおぼえがある。【この項、文：西条道彦氏（西条道彦著「TVドラマはこう書く！」（1998年、映人社刊）より引用）】」