実在の人物をモデルにした三作目は、東京・砂町で「砂町浴場」を経営している、宮寺久平さんをとり上げた。宮寺さんは、家族の反対、従業員のストにも負けず、長い間十円ぶろを経営してきた人。あまりにもそれでは気の毒だというお客の意見で、やっと昨年11月から15円に値上げした。宮寺さんは「貧しい労働者たちのためにも、もう絶対値上げはしたくない。たべてさえいければ満足だ」といっている。もっとも困った圧迫は、むすこの久男（高山秀雄）からだった。久男は、家族や使用人の重労働と低賃金で、やっと成り立っている十円ぶろでは意味がないと、従業員を集めストライキを行った。しかし壮平は妻の登代（三崎千恵子）とふたりっきりで戸をあけた。【以上、読売新聞1964/12/15付より引用】いすゞ自動車提供の単発ドラマシリーズの一本。放送期間は1964/10/06～1965/01/05。『男ありて』シリーズのうち、本作を含む４編（「街医者物語」「山襞」「堂々たる人生」「裸の王様」）は民芸のユニット作品として放送された。