1964年度（第19回）芸術祭奨励賞受賞作品。人間愛を信じて生きてきたある離島駐在の老巡査夫婦の喜びと哀しみ－無医地区という厳しい現実の中で、あえて医師法違反を見逃してきた巡査の苦悩と人間愛を描いた作品である。中継車を志賀島に繰り出し弘海岸を中心にロケーションを行った。無医地区問題は毛利恒之が郡部の派出所に赴任した叔父の体験をヒントに10年来温めてきたテーマであった。受賞の報告を聞いた叔父はうっすらと涙したという。「自分で満足できない点がいくつもあるが祈りにも似た気持ちで全力投球したつもりです。およそ40年前の無医村の話がはなやかな経済成長ムードの日本の現実の片方で、そっくりそのまま通用するほど無医地区問題は忘れられたまま放置されていること、そこに政治の貧困が露呈していると私は見るのです。２年連続の奨励賞受賞を地方制作のハンディを負いながら為し遂げたことに大きな意義を感じます。心からお祝いしたい」毛利の祝いの言葉である。【この項、「九州朝日放送50年史」（2004年、九州朝日放送刊）より引用】」東京ニュース通信社刊「テレビドラマ全史」では、「毛利　恒之」は脚本でなく原作と記載されているが誤り。