戦後、女とくつ下が強くなったとは、すでに言い古された言葉だが、大工の親方増沢政之助にとってはあまりにも実感として身にせまる。政之助が親方の娘千枝子にほれて結婚話になった時、「何もしなくていいから女房になってくれ」と言った一言によって、彼はすべて女房の支配下におかれることになったのだ。台所仕事から洗濯、掃除とまめまめしく働く政之助がじれったくてしようがない姉の定子は、彼を奮起させるべくさまざまな知恵を授けるが、すべてにおいて女房が一枚も二枚も上、ついには浮気のまねまでしてみたが、どうにも手に負えない偉大なる女房。ところがある日、政之助が現場で足を滑らせてけがをしたことと、自分の初恋の男がとんでもないマヤカシモノだったことを同時に知った千枝子は、突然百八十度の転回を見せる。家の主権は亭主の手にもどった！と思った政之助だったが、ケガもあらかたなおったころ、彼はまたしてもつぶやくことになる。「とても、勝てねえ！」【以上、1965/11/24付読売新聞より引用】提供：第一製薬、花王石鹸。