偶然タイムワープの能力を身につけてしまった少女が不思議な体験を通して一歩成長する過程を描くＳＦファンタジー。時間が一日逆戻りしていることに気付いた和子（内田有紀）は、同級生の吾朗（河相我門）と深町（袴田吉彦）に相談を持ちかける…。映画、テレビドラマで既に３度映像化されたことのある筒井康隆の原作を、『世にも奇妙な物語』などでファンタジックな作品づくりに定評ある共同テレビが映像化。原作の持つリリカルな魅力をうまくすくいあげている。内田有紀は本作が連続ドラマ初主演。【以上、文・古崎康成】「筒井康隆の原作は、1972年に放送されたNHKのドラマを始めとして、これまで三度映像化されている。今回は、連続ドラマに初主演の内田有紀が、原田知世や南野陽子が演じた主人公の芳山和子役に挑戦。「断筆宣言」した筒井自身も寺の住職役で出演している。高校二年生の和子は、理科実験室を掃除中に、気を失ってしまう。放置してあった試験管に入っていた「ラベンダーの香り」がする薬品のにおいをかいだのが原因だった。次の日から、和子の身に不思議なことが次々と起こり始めた。バスケットボールの動きが二重に見えたり、全く同じ出来事を二日続けて経験したり…。同級生の深町（袴田吉彦）や幼なじみの悟朗（河相我聞）に、相談するが…。全五回。時間移動をテーマにしたＳＦだけに、展開の面白さがポイントになるが、君塚良一の脚本、落合正幸の演出は、思春期の恋心の動きにも重きを置いた。和子を巡る人間関係をじっくりと見せ、ロマンチックな雰囲気を強調する。このため、全体のテンポはやや遅い印象がある。表題に盛り込まれたスピード感との折り合いを、どうつけていくか。ちょっと少年ぽい外見の内田は、元気で意志が強い女の子という設定にうまく合い、現代的な魅力を出している。【この項、「読売新聞」1994/02/19付「試写室」より引用。署名・聡】」車輌・ジャンプ。撮影協力・全日空、ニコン(1)-(4)、習志野市立第七中学校(1)(2)(4)(5)、三菱化成総合研究所(1)(5)、武蔵工業大学(2)(3)、京浜急行電鉄(3)、川崎中央病院(3)、横浜ドリームランド(5)、駒場学園バスケット部(5)。