プラハ国際テレビ祭大賞受賞、第14回放送文化基金賞本賞受賞、毎日芸術賞受賞、日本映画テレビ技術協会主催第27回日本テレビ技術賞受賞（録音）受賞。同賞奨励賞受賞（撮影）、NHK会長賞受賞作品。長男の命があと３か月と知った老人の苦悩。長男に会うために上京する父親は、長男の家で、長男と別れた前妻と再会する。深町幸男が制作当時のことを後年回顧している。「NHKで最後の仕事になったのが、山田太一さんの『今朝の秋』です（※注：実際は『今朝の秋』の翌年、『台所の聖女』を１本手がけている）。笠智衆さんが主演されました。実は、前作の『冬構え』の撮影で笠さんが体調を崩されたため、山田さんとの話し合いで、宇野重吉さんにやってもらおうか、という話になったのです。宇野さんは、以前山田さんの脚本で笠さんと共演したとき、「どんなにぶつかって行っても、さっと水のごとく流されてしまう。あの人には負けた」と言っていたという話を聞いたことがあります。また私も、清水監督の『しいのみ学園』で宇野さんとご一緒したことがあるのです。それで、「台本を読んでください」とお願いしたのですが、宇野さんからは、その後ていねいな手紙をいただきました。「私はやろうと思って、扮装も衣装もメイクもいろいろ考えた。自分は 60歳だ。70の年代の老人を演じるにはどうすればいいか、一生懸命考えました。だが、わたしはやってはいけないと思います。これは笠さんのためにある本なのです」と言われます。私は、なるほどと思いました。そうすると、半年ほど経ったころ、笠さんから「是非やらせてほしい」と、連絡が入りました。生真面目な笠さんですが、撮影中には、ぐらっとよろけることがありました。そのときは、転がりそうになると、こちらからぱっと手を差し出すのです。『今朝の秋』が完成した後、ビデオカセットに収録して、長野の笠さんの避暑地を訪ねました。すると笠さんが出てこられて、ハッと転びそうになったので、思わず手を貸したところ、笠さんに払われたのです。笠さんは、「撮影中はご迷惑をおかけしました。私は今撮影の仕事には入っていません。自分が倒れたのは、自分の責任ですから手を貸さないでください」という強い気持ちの表れだったんだろうな、と思います。【この項、深町幸男「ドラマづくりは阿吽の呼吸」（「放送研究と調査」（NHK放送文化研究所刊）2009/08月号掲載）より引用】」一部資料には1987/10/24とあるが誤りと思われる。一部資料では、放送枠は土曜21:10-22:40と記載されている。【役名（演技者）】鉱造（笠智衆）、タキ（杉村春子）、悦子（倍賞美津子）、美代（樹木希林）、野沢（谷村昌彦）、紀代子（貴倉良子）、小田（坂口芳貞）、東宮（沼田曜一）、看護婦（貴井みどり、岡本淳子、栗山二美、落合ひとみ）、中川の客（田村元治、根上忠、中西敦子、塚田三千、山脇登美子）、車椅子の娘（佐藤真浪）、隆一（杉浦直樹）、前崎（名古屋章）、婦長（五大路子）、木原（加藤嘉）、悦子の店の店員（西川亘、黒沢明子、佐藤知花）、若者（白岩久尚、来栖明子、照本一代、秋山浩一、森ゆき、小林奈美）、患者（石黒正男、平川ひとし、森康子）、木原の妻（由起艶子）、主婦（松本満津栄）、ギター弾き（高橋新生）、幼年時代の隆一（君島竜）、少年時代の隆一（駒崎涼太郎）。【出典：ドラマ本体のクレジット表示より採録（データ協力：ドラマ好き（役名情報）、採録：古崎康成）】