第15回ギャラクシー賞月間賞受賞作品。「太平洋戦争末期に、ハワイの収容所で「祖国の平和」を願って降伏勧告の宣伝作業に従事した日本人捕虜たちの特異な戦争体験を描く。実在の関係者も登場するドキュメンタリー・ドラマ。主人公の〝落下傘〟こと青木隆治氏（ドラマ部分は小池雄介）はサイパンで捕われ、オアフ島イロコア米海軍収容所に送られる。同収容所の副長、オーティス・ケーリ中尉（現同志社大教授、ドラマではデニス・ファーレル）は捕虜のなかから〝落下傘〟や元新聞記者や〝親米派〟を選び宣伝ビラづくりに従事させる。彼らは一刻も早い終戦を望んで作業を続けるが、苦悩は深い。「日本は植民地化するのでは」「いや、無産階級による革命が起こる」……そしてこの自問自答は、広島への原爆投下で号泣となって爆発し、終戦の放送に接しての歓喜、虚脱、何者へとも知れぬ怒りなどの奇怪な表情として現れる。一編のヤマはこの場面に凝集していて妥当な構成だが、率直に言って彼らの遣り場のない激情が直接的に伝わって来ないうらみがある。たぶん、それは日本を全ての「悪」とし、米国を全くの「善」とする感性に、このドラマが貫かれていることに原因がある。しかし、戦後世代の戦争理解の幅をもう一つ広げることになるのは確かだ。【この項、毎日新聞テレビ欄「視聴室」より引用（署名：地）】」