ポーラ名作劇場500回記念番組。貧しく、恵まれない人々を相手に治療をする医者とバクチ好きな女房との愛情物語。「こんど五百回記念番組「ふんどし医者」をたまたま担当することになった。ぼくとしては「いのちある日を」以来の演出だが、くしくもまた高橋玄洋君とコンビを組むことになった。かれとの出会いは、NET開局時にさかのぼるが、かれとの仕事が多いのは、ぼくにとって運命的にすら感じられる。「ふんどし医者」は、中野実原作でオリジナルでこそないが、激動の幕末期にあって、自由な人間として生きる喜びを味わった、いなか医者夫婦（松本幸四郎、新珠三千代）の人生愛を描いたものである。ぼくは、この作品を通じて、人間のもつ闊達さ、若わかしい、大らかさを大いにうたいあげたいと思っているが、人間が自ら開発したメカニズムに自縄自縛、呻吟している現代社会において、果たして、一服の清涼剤たり得るか、ぼくなりに丹精こめて作るつもりだ。【この項、山本隆則著「歴戦ドラマドラマ」（1998年、審美社刊）より引用）】」