出演の福田公子は本作制作時の失敗談を後に語っている。「テレビのセットは長屋や、公園や、座敷などがなんのつながりもなく隣りあわせにひしめきあっているのが普通です。ミュージカル『お嬢さん売出す』に出演したときも公園のベンチと家庭の玄関口がとなりあっていました。その公園では若い二人のデートがあって、終るとわたしが家を訪問するという筋がき。きっかけはディレクターのキュー（手の合図）で知らせるというのでディレクターの手ばかり見ていました。合図があったのでツカツカと玄関先へ現れて「ごめん下さい」としゃべったところ全然の反応なしです。ディレクターは大きく手で合図。これは声が小さいのかなと思ってさらに大声で「ごめん下さい」。まだ合図をするので首をかしげてさらに「ごめん下さい」。後でわかったのですが最初のキューは公園のシーンに無意識に相づちをうった合図。二度目以後のは突拍子もない「ごめん下さい」をやめさせようとした必死の手だったのです。おかげでテレビの画面には公園でラブシーンの男女のわきに、ヘンなのが突っ立っていて、まったく収拾のつかない有様だったそうです。【この項、朝日新聞1959/05/31付より引用】」