美貌と才能に恵まれた江波明子（瑳峨三智子）は出版社の商業デザイナーとして多忙をきわめている。優秀な翻訳者南条（金子信雄）は彼女のすべてを熱愛、彼女ももし彼に妻がいなかったらと思うこともあったがいま一歩というところで後退してしまうのだった。ある日、とうとう南条は妻との離婚の書類にハンを押したから、翌晩、アパートにいるように彼女にいった。二人の間にもう何も障害はないのだ。だが、翌日、彼女は若い社員の浜（細川俊夫）が前から彼女に好意をよせ、夜、彼女のアパートにわざとまちがえたふりをして電話をかけてくるのに気付いた。果たして白状させてみると、浜の心は彼女のことでいっぱいである。彼女もそんな青年の純情がうれしく、彼の卑下した心に自信をつけてやろうとデートを約した。だが、彼はその日、交通事故で急死した。死なれてみると、いまさらのように青年がいとおしく、素直に南条と結婚する気持は全く消えていた。彼女は南条に別離を宣言する。【以上、毎日新聞1964/09/15付より引用】