４月、生徒たちがまだ出身小学校別にかたまって、ぎこちない雰囲気の1年A組。鬼頭果奈はそんなクラスメートたちを観察して、ノートにイラストを描いている。クラスでただひとり果奈と同じ小学校出身者の西川つかさ、バレーボール部に入部したものの、公園でひそかに一輪車に乗っていた後藤佑樹、隠してはいるが彼女よりロボットアニメのほうが好きらしい伊藤　翔、三年生なのに教室にやってきて部の後輩である佑樹をいじめるつかさの兄（安達恒介）…。そんなクラスメートを、想像力でふくらませて魅力的なキャラクターとおもしろおかしいエピソードにしたて、描いていたのだ。じつはこのノートは、別の学校に行ったマオ（西川真央）との交換日記だった。ふとしたことからノートの隠し場所を見つけたつかさは、盗み読みするようになってしまう。６月も終わろうとするころ。たっぷりと書く果奈に比べて、いつもわずかなコメントを返すだけだったマオが、日記をやめようと書いてきた。中学での時間が長くなるにつれて、マオのなかでそちらのほうが大きな存在になってきたのだ。果奈より先にそれを読んでしまったつかさは、日記を家に持ち帰り、果奈を傷つけないようマオの文章を変えてしまおうとする。ところが、つかさの兄が日記を発見。一輪車に乗っている佑樹の絵を大量にコピーして、教室の黒板一面に貼ってしまう。恥辱に耐える佑樹、硬い表情の果奈、盗み読みが露見して狼狽するつかさ。しかし佑樹は、逆にこの事件をきっかけに、一輪車部をつくろうと決意する。ほとんどの生徒が子どもの乗るものだといってバカにするなか、つかさと果奈は、心動かされるものを感じていた。そして、レギュラーを外されチームメイトと衝突、退部して以来、何もせずにいたつかさの兄もまた…。一輪車の車体を前後させて同じ場所にとどまることをさす用語「アイドリング」になぞらえて、環境が変わることで生じた人間関係の変化に適応できずにいた中学生が、自分の居場所を見いだすまでを描いた。居心地の悪さ、生きにくさを、空想の世界を起爆剤にして脱出する生徒たちの、軽やかな姿が印象的。カメラは、一輪車からの視線に擬されているかのように、横に移動するカットが多用されている。独特の速度感（リズミカルなピアノの劇伴も効果的）と浮遊感、そしてユーモアのあるタッチも、ドラマを視ている者までもが、スピードを競うわけではないが歩くよりは速い一輪車に乗っているかのように思わせる。2005年度一学期の『中学生日記』は秀作・佳品が多いが、そのなかでも本作は、「川’Ｓ～リバース～」と並んで、映像とテーマが絶妙に融合した傑作である。【以上、番組広報資料より引用】『中学生日記』のタイトルコール前の「オープニングメッセージ」は西川つかさ、キーワードはなし。再放送は7/2（土）10:45-11:14。【データ協力：練馬大根役者】