妻の美智代（加賀まりこ）から温泉旅行をせがまれた薮野（山城新伍）は、ほうほうの体で順子ママ（芦川よしみ）の店へ逃げ込んだ。天の計らいか、そこにいたのは薮野好みの新人ホステス・チエ（光井みほ）。薮野は妻のおねだりも忘れ、早速、チエを温泉旅行に誘うがあっさりフラれてしまう。しかし翌日になって「西伊豆なら」とチエからＯＫの電話が入った。有頂天になった薮野は家族や職場に嘘をつき、いそいそと堂ヶ島温泉へ繰り出した。温泉に入り豪華な夕食も済んだ。しかし、さあいよいよという段になって不覚にも薮野は寝入ってしまう。ふと薮野が夜中に目を覚ますとチエの姿はなかった。慌てて探しに出た薮野は、草むらでチエの死体を発見。さらに通りかかった観光客に現場を目撃され、薮野は殺人の容疑者として警察に連行されてしまった。出張旅行だと信じていた美智代は翌朝のワイドショーを見るなり卒倒。「不倫の末の殺人」のテロップとともに薮野の顔が画面に大写しで現れたのだ。一方、当の薮野はアリバイが証明されて無罪放免となった。しかし浮気旅行がバレた今、おめおめと帰れる筈もなかった。自ら犯人を見つけて汚名挽回しなければ薮野の明日はない。薮野は意を決し、チエの解剖を担当した医師・中道（梅宮辰夫）の診療所を訪ねた。中道によると殺害現場には争った跡があるものの、特に不審な点はないという。だが薮野には致命傷の刺創角度が気に掛かった。被害者の体に垂直に入った殺傷痕。その傷の角度が意味するものは…。