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ドラマ 詳細データけったいな人びと(けったいな人々)

日本放送批評懇談会賞(ギャラクシー賞)第25回期間選奨受賞(出演・高森和子、西山嘉孝)対象作品。日本放送作家協会女優賞受賞(高森和子)対象作品。太平洋戦争直前までを背景に、大阪靱の海産物問屋を舞台に、たくましい大阪庶民の哀歓を笑いとペーソスで描く。茂木草介さんの半自叙伝的な作品。茂木草介は当時「私の<けったいな人びと>」という一文を記している。「連続ドラマ『けったいな人びと』は私の書きおろしだが、登場人物についてはモデルがある。私の母方の祖父の一家がそれで、ヒゲの長い怠け者の平太郎や、それに手を焼いて、なにかと言えばすぐにサトへ逃避するふさは私の祖父母であり、三女のみつ子が私の母に当たる。だから、長女のたか子や次女のはな枝は私のおば、長男の与一郎と異母弟の房吉は私のおじに当たる。もっとも、モデルといってもそっくりそのままではドラマにならないので適当なアレンジが加えられており、家業や時代なども変えてある。ただ、変えていないのは、全体を通じての人間像が、今日ではほとんど見ることの出来なくなった「ココロ人間」の集りだということである。「ココロ人間」とは物資の豊かさにだけ執着する「モノ人間」に対比する言葉である。私がA新聞の「心のページ」に書いた「阿呆(アホウ)人間のおはなし」のなかで、私の父に触れた部分がある。「私の父はヘンな男で、昔「自動式馬糞採取器」というのを発明して私を驚かせたことがある。当時は馬がひく荷車が多く、地道に落ちた馬糞が風に乾いて粉末となり家の中まで舞いこんで来るのに父は閉口したらしい。その器械は、馬が排便時に必ず上方へ持上げる尻尾の力を利用して、両足の間へぶらさげたバケツが肛門へ近づくようにくふうしたもので、数本のベルトの組み合わせが考案のポイントであった。父は東京の新案特許許可局へ特許願を出せという。私はそんなばかばかしいものに特許がおりるはずはないと思ったが、いたずら半分の気持で、図書館で書式を調べ、略図を添えて、収入印紙をベタベタはって郵送したら、三月目に新案特許のナンバーが来たので私は驚いた。…私の育った町は戦災でなくなり、父も20年前に亡くなった。しかし、その特許がおりたときの父の晴れやかな顔や、それを祝ってくれた近所の人たちの顔は忘れられない。この馬糞採取器の話は、房吉の発明として6月25日放送分に登場する。この房吉のモデルであったおじは実際にタングステン電球を改造したり温泉の濃縮液を作って売出したりもしたのだが、売出す技術はまったく未熟で、電球は実用にならない個所があり、温泉は説明不足でいったい何に使うのやらはっきりわからないという始末で、事業化にはいっても失敗し貧乏をしていた。それでも、彼は常に明るく、胸を張って大阪の町を歩きまわっていた。つまり、金や物では計量されない夢の持ち主だったのである。もうひとりのおじにも大きな夢があった。たとえば、いまでいうなら、森繁久弥さんのような大俳優になって全国の子女を沸かせたかったのである。しかし、これも準備と計量の不足でついに成らず、残念にも山奥の湖水で事故死して壮大な夢を水のアワとして残した。そんな、言うなれば、夢にだけ生きた阿呆人間である。しかし、同じ阿呆でも長女のたか子には、夢とともに現実を見つめて歩む着実さがあった。このおばは社会的にも一応の名をなして成功している。だが、はじめから成功だけを計算して努力したわけではなかった。他の妹や弟たちと同じく、自分の夢をひたすらに追っただけだが、野放図さばかりではなくて、自分を客観視できる緻密さがともなったのである。私は、戦時中に徴用されて海軍の造船所に勤めた。そこでは、それまでの私の社会生活とはまったくウラハラに、人が人として人を見る目が皆無なのに驚いた。そこでは物と時間との計量が生活のすべてであって、実際に効果のあるなしにかかわらず、どのように怠けようとも、十時間働く人よりも十二時間働く人がエライ人であり、他人が二合食う飯を何かのトリックを用いて四合食う人が頭のよい人とされた。しかし、私は、これが軍隊、または軍隊式というべきで、戦争が終ればもとどおりになるのだと思ったが、そうではなかった。『けったいな人びと』は戦後ながらく、私があたためていた素材である。ケッタイなとは、ヘンテコな、変わった、あるいは珍妙なおかしさ、ともいうべき形容詞だが、私は、いま、ケッタイさのなかにこそ、ほんとうの人間が生きているような気がしてならないのである。【この項、文:茂木草介氏(「グラフNHK」(NHKサービスセンター発行)1974年6月1日号より引用)】」吉岡ひとみのテレビドラマデビュー作。【役名(演技者)】大槌平太郎(西山嘉孝)、大槌ふさ(高森和子)、大槌たか子(八千草薫)、大槌与一郎(藤田まこと)、大槌房吉(笑福亭仁鶴)、大槌はな枝(武原英子)、大槌みつ子(岡田由紀子)、おいま(林美智子)、神田慎吾(斎穏寺忠雄)、吉兵衛(溝田繁)、勝部(佐藤慶)。【参考資料:雑誌「グラフNHK」(NHKサービスセンター発行)1974年6月1日号・1974年9月号、webサイト「脚本データベース」(2020/08/06参照、http://db.nkac.or.jp/top.htm)、書籍「日本タレント名鑑'81」(1980/12/30、VIPタイムズ社発行)[池部良の項]】
キー局 NHK GTV 放送曜日 放送期間 1973/04/02~1974/03/25
放送時間 20:00-21:00 放送回数 50 回 連続/単発 連続
主な出演 西山 嘉孝高森 和子八千草 薫藤田まこと笑福亭仁鶴武原 英子岡田由紀子林 美智子斎穏寺忠雄斉穏寺忠雄斉隠寺忠雄西園寺 宏西園寺章雄)、溝田  繁佐藤  慶遠藤太津朗寺田  農駒田 真紀甲 にしき小川 甲子)(20)(30)、財津 一郎(27)、吉岡ひとみ津田 京子未確認)、池部  良上方 柳太(44)(45)、小林 芳宏(50)、
主な脚本 茂木 草介
主なプロデューサ 成島 庸夫(1)-(20)、丸田  強(22)-(50)
主な演出 佐藤満寿哉(1)(4)(7)(10)(15)(21)(25)(27)(30)(33)(36)(39)(42)(45)(50)、藤田 道郎(2)(5)(8)(11)(34)(37)(40)(43)(49)、北村 充史(3)(6)(9)(17)(20)(23)、門脇 正美(13)(16)(24)(26)(41)(44)、山内  暁(19)(22)(29)(35)(38)(47)、村山 昭紀(48)
原作 茂木 草介
局系列 NHK
制作会社 NHK(大阪放送局)

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