トシ子（菅井きん）は夫をサイパン島の戦争で失ってから、娘・百合子（大空真弓）と息子・武男（石立鉄男）を日本に残してグァム島にわたり現地人と再婚した。そして、14年の歳月が流れ、百合子が結婚するという知らせを受けトシ子は故国の土を踏む。しかしなぜか子供たちは母を避けるようにしていて心が通じあわない。やがて、トシ子は百合子の結婚する相手が48歳で、しかも子供のいる会社の重役であることを知って驚く。グァム島に定住した母親と戦後の日本に育った子供とのふれあいから、日本人にとって故国とは何なのかを問う。【チャンネルNECO広報資料より引用】。タイトルの「バンザイ岬」はサイパン島の北端にある岬のことで、日本軍のサイパン島陥落時に多くの日本人女性が子どもとともに「バンザイ」と叫びながら海に身を投げたという。名脇役として知られた菅井きんが主役級を演じた珍しい作品。菅井きん自身、本作とおぼしきこの珍しい主役級の演技を失敗だったと自著で語っている。「昔、一度だけ、NHK大阪の木下恵介先生の作品で主役をいただいたことがありました。それも、『おやじ太鼓』という先生のシリーズにずっとわきをやったごほうびとして、木下先生が私のために主役の脚本をわざわざ書いてくださったのです。サイパンから引き揚げてきた生き残り夫婦の話でしたが、これが、みごと失敗。ワンシーン、ワンシーン、精いっぱいがんばりすぎて、私一人が浮き上がってしまった苦い記憶があります。わき役は、少ない出番の中でいかにその役柄を印象づけるかが重要ですが、主役は、自分の力をどうコントロールするかがポイントなのです。木下先生にもそのことを指摘されました。やはりどうも主役は私には合わない、根本的に違うのじゃないかとその時に思いました。【この項、菅井きん著「わき役ふけ役いびり役－女優一筋四十五年－」（1990/11/25、主婦と生活社刊）より引用】」