幕末の動乱期に新撰組を作って活躍させた不屈の闘志の持ち主・土方歳三（内田良平）の生き方。沖田総司役の杉良太郎はこれがデビュー作。杉良太郎は自著で語っている。「ある日、今は亡き芥川隆行さんから連絡があった。「東京12チャンネルで時代劇が始まるんだけど、出演する気持ちありますか」――突然のことに、私はちょっととまどった。歌手になろうと思って上京して来たのに、時代劇とは……芝居やドラマをやるつもりは全然なかった。どうしよう……。作品は司馬遼太郎原作の『燃えよ剣』で、役は沖田総司だという。役柄としては悪くない。しかしマゲものをぼくが演ってウケるだろうか……迷った。当時の12チャンネルは開局したばかりで、スタジオドラマ時代劇は初めてだという。しばらく考えた末、演ってみよう！何ごとも体験だ、と思うにいたった。改めて芥川さんに「お願いします」と頭を下げた。やがて撮影は始まった。ところが、である。沖田総司といえばかなりさっそうとした人物なのに、私はどうやってドーランを塗ってもらったのか、どんな衣裳を着て、どんな動きをし、どんなせりふをしゃべったのか……ワンクール、つまり十三本も撮ったのにいま振り返ってみても、全く覚えていない。無我夢中で、とんと実感がないうちに一本が終わってしまう。次回こそはなんとかしよう――と思っても、いざとなると目の前が白くなって、またもや無我夢中。あれよあれよという間に、ワンクールが終わってしまった。当時の12チャンネルは、低視聴率番組ばかりで、しかも東京にしか放映しなかったと思う。この『燃えよ剣』も評判らしい評判もなかったようだ。だが、多分このおかげだったろうと思う。日活映画の専属俳優になることが出来たのだ。【この項、杉良太郎著「これこそわが人生」（1991年、読売新聞社刊）より引用】」最終回のみ、土曜21:00～21:30に放送。提供：黄桜酒造。【データ協力：カミコロ】