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ドラマ 詳細データ芸術祭参加作品 傷痕

第15回芸術祭奨励賞受賞作品。「就職試験を受けた成績優秀な青年(伊藤孝雄)が、顔面に傷痕があるために、なぜか企業に採用されなかったという実話をもとにして、企業内における個人と組織の問題を突いたドラマ。視聴者に対しては、こういう企業内部の人事問題について、一人の人間としてどう思うかと一石を投じてみようという意欲が込められていた。脚本は高橋が三稿まで練り上げて大垣が監修、演出の山本(隆則)は「三十六ブロックに分けて三日間徹夜で撮影、編集もまる二日間徹夜で仕上げた。ビデオテープの編集によるテレビドラマの放映は、在京のテレビ局では一番最初だったと思います」と本人(=山本隆則)が書いているように、全身全霊を尽くして取り組んだ。試写を終えたとき、「すまん、力を出し切れなかった」と山本は言い、高橋玄洋は「とんでもない、いたらなかったのはこっちです」と二人は握手した。「そのとき二人の手がぬれるのはどうしようもなかった」と山本は重ねて書いている。こうして、二人は精も根も使い果たして、この『傷痕』を仕上げた。その結果は芸術祭奨励賞に輝き、「私個人としても会社としても初めての受賞でしたから忘れることができませんね」と山本は語っている。この成功の要因は、当時社員だった高橋に思い切って脚本を書かせた田中亮吉部長の英断がまず最初にあり、その高橋脚本の良さを生かした山本演出には、ヒューマニズムとリリシズムがよく出ていたことだった。顔に傷痕がある青年がなぜ企業で受け入れられないかという人間的怒り、それでも真面目に懸命に生きる青年の純粋さが、視聴者の胸を打ったに違いない。【この項、志賀信夫著「映像の先駆者125人の肖像」(2003/03/30発行、日本放送出版協会刊)より引用】」伊藤孝雄のテレビ初出演作品。また、当時NETの演出部員だった高橋玄洋の奨励賞受賞作。本作の脚本は「高橋玄洋作品集 生きて愛して死んだ」(三一書房刊)に収録されている。本作を演出した山本隆則は後年、高橋玄洋とともに本作をはじめとした諸作に取り組んだ思い出を語っている。「玄洋作品の一つの原点は、なんと云っても『傷痕』ではなかろうか。当時彼はNETの社報に次にように書いている。――私が傷痕執筆の命を受けたのは、たしか8月11日だったと記憶する。ことは一年一度の芸術祭である。私はただ呆然とし、ことの重大さにやたらと興奮してお引受けした。「大丈夫?田中部長や山本さんに恥をかかせるようじゃ、今のうちに…」またとないチャンスを与えられ歓喜して帰宅した私の頭に妻は冷水を浴びせかけた。たしかにその通りである。これは大変なものを引受けてしまった…(中略)その日から朝床につき夕方起き出して机に向い、食事も運ばせるという下宿同様の籠城生活がはじまった。三つになる娘もそっと足音を忍ばせ、妻は押売りでも来ると慌てて戸外へ押し出してる風だった。こうして2週間、兎にも角にも95枚の第一稿を書き上げた。共作の大垣氏に加わって貰って稿を重ねること三稿、愈々台本発注。(中略)リハーサルも順調、森雅之氏を中心に異様な緊張が稽古場にはりつめて息苦しいほどである。(中略)こうして11月15日夕刻、ラストの街頭場面を最後に、4日間に亘る全スケジュールを終了。直ぐさま編集にかかり、試写を終えたときは翌払暁であった。「済まん、力を出し切れなかった」と山本さん、「とんでもない、至らなかったのはこっちです」握手した手がぬれるのをどうしようもなかった。『傷痕』ばかりでない。『妻なれば…』『生きて愛して…』『旅路』『いのちある日を』等々、思えばその一つ一つが、今尚わが脳裡に生々しい陣痛を伴って蘇って来る。彼の作品を演出するとき、僕はいつも思いのたけ、自分の力を発揮することが出来た。彼との邂逅は、僕にとってまことに幸せであった。そしてともに喜びも悲しみも託した作品は、数えて90分物1本、60分物42本、そのうち6本だけが脚色物で、あとはすべてオリジナルである。その昔、家人に原稿用紙を紙屑に変えるダストメーカーと皮肉られた習作時代に培われた彼の努力が、見事に開花し結実したのだ。そしてこの豊かなオリジナリティこそ、彼が今日押しも押されぬ第一級の放送作家として、独自の地歩を築き得た所以ではないかと思う。【この項、山本隆則著「或る“履歴書”」(「放送文化」(雑誌、日本放送出版協会刊)1972年4月号掲載)より引用)】」【参考文献:「テレビドラマ」(雑誌、現代芸術協会刊)1961年2月号、「放送文化」(雑誌、日本放送出版協会刊)1972年4月号】
キー局 NET 放送曜日 放送期間 1960/11/20~1960/11/20
放送時間 19:30-21:00 放送回数 1 回 連続/単発 単発
番組名 NECサンデー劇場
主な出演 森  雅之伊藤 孝雄高田 敏江沢村 貞子澤村 貞子)、柳 永二郎河野 秋武遠藤 慎吉御橋  公若宮忠三郎遠藤 慎吉清水 一郎松村 達雄浅野進治郎鈴木 光枝柏  正子北町 史朗宮川 洋一平沢公太郎藤田  尚八木  侃園田 裕久
主な脚本 (作:大垣  肇高橋 玄洋
主な演出 山本 隆則高橋 玄洋
局系列 ANN
制作会社 NET
制作 田中 亮吉(企画も)
企画 田中 亮吉(制作も)
音楽 斎藤 一郎
HP

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