小説家であるがノンフィクションの分野にも意欲的な飯尾憲士の作品、「ソウルの位牌」のドラマ化。彼の関心事は常にかっての朝鮮、現在の韓国であり、そして父であり、母である。母は日本人だが、父は朝鮮人、つまり飯尾は日韓の混血児なのである。そしてこのドラマは、彼が父の位牌を持って初めて訪れた、父の祖国・韓国ソウルでの三日間の出来事を中心のナレーションを多用しながら、抑制された手法で描きだしている。このドラマは、戦争の悲惨さとか平和の尊さを声高に訴えるものではない。それより、飯尾の父の祖国・韓国がどの国よりも近い位置にありながら彼が老境に至るまで訪れることがなかったとうい事実、そして不幸な歴史の体験の中で加害者であり続けた日本からの「私」を韓国の人達が拒否することなく親族として迎えてくれた真実を描くことで、民族や人権を越えた「血族」としての絆の強さ、美しさ、そして悲しさを奥の深い共感とともに語りかける。【以上、NHK広報資料より引用】