旅の舞台一座「河内桜子一座」が舞台の笑いとペーソスの物語。岡本愛彦と森光子は当時夫婦だったが、本作に「出る」「出ない」が破局の直接原因だったという。「テレビ局や、東宝や芸能プロはキミの一生を保証しない、夫であるぼくだけが森光子の生涯を保証するのだと、あなたはいいます。そのことは、私じしんが誰よりもよく知っている。でも愛彦さん、私は、退職金も失業保険もない俳優という職業のみじめさを、肌身に刻んでいるのです。だから、お仕事を断るなんてゼイタクなことはできないと、私はおもう。だから仕事をえらんで、女優としての生命をながく保てと、あなたはいう。同じところで私たちは、食いちがってしまいました。それは、どうすることもできない、宿命的な食いちがいでした。【以上、竹中労・著「芸能人別帳」（ちくま文庫刊）より引用。文章は森光子の手記として紹介された記述である】」