純三（寺田農）はボクシングが大好きだ。さらにチンピラ仲間から「兄貴のパンチはすげえ」といわれ大いに気をよくしている。そこで太洋拳の並木選手（高橋幸治）と三枝トレーナー（玉川伊佐男）は気ちがいに刃物だと純三を追い返してしまう。しかし、純三はあきらめない。それからというもの、毎日並木のロード・ワークにつきまといはじめた。その熱心さに負け三枝はやくざの足を洗ったら入れてやると約束した。純三は、ガールフレンドの光子（関みどり）につきそわれ、北原医師（松村達雄）をたずねた。腕のイレズミを消してもらうためだ。だが、イレズミは消えても、やくざの世界との縁は切りにくい。あこがれの太洋拳へ入り、新人戦を勝ち抜いていく純三に、組長から八百長の話が持ち込まれたのだ…。この「男ありて」シリーズは、苦しみながら生き抜く男の根性を描いているが、今回は第一回の野球ドラマに続き、二度目のスポーツものとして、ボクシングをとりあげた。物語は、ボクシングがメシより好きな若者（寺田農）が、やくざの世界からぬけ出そうとし、そして新人王の座を獲得するまでを描く。主役になる寺田農は「みっともない演技はできない。ボクシングの専門家が見てもおかしくないポーズがとれなくては」と、オギノジムの堀田春栄マネジャーのもとに、十日間かよい続け、基礎練習をみっちり身につけてきた。ハード・トレーニングの効果あって体重が５キロも減ったほど。堀口氏も「寺田君は素質がある。フライ級で出ればプロでもいい試合をするんじゃないですか」とほめていたそうだ。また、このドラマに、オギノジムから朝倉和正、高橋勝将、斎藤元道、美川勇の四選手と、レフェリーの遠山甲、北村淑氏らが特別出演してボクシングの雰囲気を盛り上げる。【以上、読売新聞1964/11/17付より引用】いすゞ自動車提供の単発ドラマシリーズの一本。放送期間は1964/10/06～1965/01/05。