自殺しようとした女（杉田弘子）の部屋に、人を殺して追われる男（岡田真澄）が飛び込んで来る。男に捨てられた女と女に裏切られた男との、たった二人の密室が描かれる。お話の内容は、以上のごとくなんということもない。不幸と不幸とがくっついて愛が芽生え、男が刑務所から出て来るまで女は待っていますと、例によって例のごとくなるだけのことである。ドラマの大半を、男に扮する岡田真澄が上半身裸だったのには驚いた。雨のなかをズブ濡れになって逃げて来たのだから、裸なのは当たり前なのかもしれない。それにしてもネグリジェを着た杉田弘子が、裸かの岡田真澄に抱きついたりすると、どうしたわけか、初なこちらの背中がチカチカするのには困った。キメの細かい演出家と思えるせんぼんよしこは、案外、私などとはくらべものにならない、タフな神経の太い人なのかもしれない。（羽山英作、キネマ旬報No.279）