圧政に苦しむ人々を救おうと一人の乙女が祈ると、巨大な魔神が動き出し、悪人を懲らしめる－－。1966年に誕生した「大魔神」が、44年後、また深い眠りから目覚める。『大魔神カノン』。この４月からテレビ東京系の５局で放送される「大魔神シリーズ」の現代リメーク版だ。深夜１時以降の時間帯でスタートするが、中年以上の世代には懐かしい特撮も見られそうだ。新作も、乙女の祈りが大魔神を目覚めさせるのは変わらない。ただ、旧作が魔神の「怒り」やその破壊を描いたのに対し、新作は「祈り」や「人を信じる心」を原点に据えた。番組制作にあたった角川書店の高寺重徳プロデューサーは、親子間やネットがらみの短絡的な殺人事件が相次ぐ世情を背景に「メッセージ性のあるドラマ」を構想したという。物語には人に愛された器物や動物が転生した「オンバケ」と、人に強い恨みを残して死んだ者が転生した悪霊「イパタダ」が登場する。二つは対峙するが、イパタダは次第に勢力を拡張する。高寺プロデューサーは「イパタダとは、人から愛を受けられずに育ち、人を敵視してしまう現代人にある心を象徴する。格差社会が進み、ますます存在感を増すと見ている」と話す。「イパタダをたたきつぶして解決するのではなく、愛の力で包んで問題を解決することを目指した。一刀両断にぶっ壊して世直しするイメージの大魔神にも今回は、悩んで愛して受け入れることを負わせた」大魔神はいつ登場するのだろうか。祈りの歌で大魔神を目覚めさせる主人公の大学生の巫崎（みさき）カノン役には7000人の中から里久鳴祐果（りくなゆか）を選んだ。悪霊や大魔神の特撮にCGを大胆に使い、コストをかけた。44年前に比べ、時代は大きく変わったが、人は人。善悪で仕分けられる世界を超越し、心がすさむ時代を少しでも明るくしてもらいたい。【以上、文：松田史朗氏（朝日新聞2010/03/22付「フォーカスオン！」より引用】各回のサブタイトルは以下のとおり。第21話「佳音」、第22話「貫温」。車輌：合田　彰二、小原　　正、北澤　正晃。ロケーション協力：常総フィルムコミッション(21)、つくばみらいフィルムコミッション(21)、八王子フィルムコミッション(21)。協力：SANKYO(21)、角川大映撮影所(21)、HOPPY(21)、日本照明(21)、東光映材(21)、グリフィス(21)、美学舎(21)、プロップアイズ(21)、ひまわり(21)、紫水園(21)、高津装飾美術(21)、クロキプロ(21)、俳協(21)、クオラス(21)、COSPA(21)、yano(21)、PLEX(21)。