テレビドラマデータベース選出第11回（2007年度）総合ベストテン（連続ドラマ部門）第５位。「時給三千円、特Ａランクのスーパー派遣である大前春子（篠原涼子）は、面談の席で正社員たちに向かってクールに、しかしキッパリと言い切る。「私を雇って後悔はさせません。三か月間、お時給の分はしっかり働かせていただきます」。すごいね。『ハケンの品格』には毎回こんなシビれる決めゼリフが三分に一度は出てくる。脚本は『anego』の中園ミホだが、キャラの強さ、テンポの良さも特Ａランクで絶好調だ。ちょっと見には、流行語二つをくっつけた安易な番組タイトルの印象もあるが、権威を誇示し異議申し立てを許さぬ気配の漂う「品格」という単語の上に、ハケンという吹けば飛ぶよな片仮名をポンと乗っけて相対化するセンスが非凡だ。シャレがきいていて批評になっている。春子が派遣されたＳ＆Ｆの主任、東海林（大泉洋）は二言目には「派遣はな、黙って正社員のいうことを聞いていればいいんだ！」と喚く。無神経なくせに上司の顔色を読むのは得意。それでもどこか憎めないのはオレ様社員を、大泉が悪達者に映る寸前でぴたりと抑える好演で、篠原涼子と五分に渡り合っている。正社員→派遣社員→フリーター。世界に冠たる身分制社会をドラマにしない手はない。といって正面から描いたところで、見ている者の気持ちは荒涼とするばかりだ。ここは目先を変えて超人伝説と笑いで、という制作サイドの判断は正しい。もともと、差別と笑いの相性は良い。というより、笑うっきゃないほど苛酷な現実、それが差別だ。その差別の底辺であえぐ可愛いダメ派遣の加藤あいが弱音をポロリと漏らした後の春子のセリフがまたかっこいい。「不景気が百年続こうと、日本中の会社がつぶれようと、私は大丈夫。ハケンが信じるのは自分と時給だけ」冷徹さと義理人情、その両方を備えた部長役の松方弘樹の貫禄もさすがだが、意外なめっけものが大泉の同僚のダメ主任役、小泉孝太郎だ。残業の合間に大泉が孝太郎にしみじみ話しかける。オレたちを可愛がってくれた先輩たち、みんなリストラされていなくなっちゃった。その代わりに赤の他人の派遣が増えるばっかりだ、そんなの許せるか。格差を拡大化し固定化した張本人である前首相の息子に向かって、リストラ社会の不満をぶつけるなんて、毒っ気も特Ａだ。格差社会ではハケン社員のその下の最底辺に位置する雑文業者の私はニヤリとした。【この項、亀和田武・執筆「テレビ健康診断」（週刊文春2007/03/01号掲載）より引用】」「各話サブタイトルは以下の通り（カッコ内はルビ）。1「スーパー派遣（ハケン）登場！」、2「プライドとホッチキス」、3「社員の友情　ハケンの仁義」、4「恋とお時給」、5「お時給インベーダーVSナマコ大先輩」、6「涙の残業バレンタイン」、7「企画コンペに恋は厳禁！」、8「派遣にプロポーズ！？」、9「スーパーハケンの過去」、最終話「契約終了！！スーパー派遣最後のスキル」。放送時間変更（カッコ内は理由）…(1)→1/10（水）22:00～23:09（初回拡大版）、(8)→2/28（水）22:30～23:24（「アジア男子サッカー2008２次予選U-22日本代表× U-22香港代表」中継）、(9)→3/7（水）22:15～23:09、(10)→3/14（水）22:00～23:04（最終回拡大版）。【この項、文・練馬大根役者】」なお、再放送時は延長されていない短縮バージョンをオンエアすることが多い。車輌・麻生リース。撮影協力・リクルート・スタッフィング(1)-(10)、三菱地所(1)-(10)、oazo(1)-(10)、東急バス(1)-(4)(6)(9)、カシオ計算機(1)(4)、ヒューマンリソシア(1)、神田外語大学(1)、テンプスタッフ(1)、スタッフサービス(1)、Intelligence(1)、Dynacity(2)(3)、Robinsons(2)(3)、装道礼法きもの学院(2)、横浜市中央卸売市場本場(3)(10)、菊平(3)、西さがみFC.小田原市(3)、リーガロイヤルホテル東京(4)、大宮タカシマヤ(5)、シルスマリア(6)、西山堂印刷店(6)-(10)、ルミアモーレ(6)(9)、椿山荘(7)、八王子フィルムコミッション(7)、味の素スタジアム(8)、天王洲セントラルタワー(10)、オフィス設計(10)、丸運(10)、La Casa Niki（ラカーザニキ）(10)、リーガロイヤルホテル東京(10)、東京ガス豊洲開発(10)、東京スカイダイビングクラブ(10)ほか。【出典：ドラマ本体のクレジット表示より採録（データ協力：練馬大根役者(1)-(10)）】