第５回ATP賞'88「ベスト20番組」選出作品。「最愛の妻に先立たれた初老の主人公が、同じ境遇の老人と出会い、互いに悲しみを乗りこえて生きがいを見いだそうとするヒューマンドラマ。琵琶湖の辺（ほとり）で釣り舟屋をやっている桑野（小林桂樹）は、妻のよし江（山岡久乃）に先立たれてから生きる気力を失っていた。そんな桑野を見かねた息子の秀雄（速水亮）と嫁の由美子（千野弘美）は気分転換にと、ひとり旅に桑野を送り出した。旅に出たものの、よし江の好きだった琵琶湖から離れられない桑野は、湖北の旅館でひょんなことから高森（下元勉）という老人と知り合う。偶然、妻に先立たれた同じ身であることを知った２人は意気投合、翌日はいっしょに観光して回った。楽しくすごしたが、桑野は別れ際の高森の思いつめた表情に後ろ髪をひかれた。案の定、帰宅した桑野に高森が断崖で投身しようとして警察に保護されているとの知らせが入る。身元を明かさぬ高森が桑野の名刺を持っていたのだ。他人事と思えない桑野は引きとりに。憔悴しきった高森にことばもない桑野。何日たっても高森を引きとりに来ない東京の息子たちに、桑野は激しい憤りを覚えた。【この項、「ザ・テレビジョン」（角川書店刊）1988/02/19号より引用】」