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快傑ドラマ小僧
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快傑ドラマ小僧
(麻生和也・著/1200円/二見書房・刊/ISDN4-576-00692-4)
2000年11月02日発売

TVドラマはこう見ると面白い!
名作・話題作77本−日本初のドラマ批評本
鋭すぎる評でテレビ界から圧殺された問題コラム復活

★(ページ作者寸評)
 昨年11月に発売された本書は、暮れにかけてドラマ好きが集まった席でよく話題にあがった。それだけを見ても極めて影響度の高い本であった。
 本書は「テレビドラマ愛好家」麻生和也氏が1991年から1997年まで「TV STATION」上に連載していた「快傑ドラマ小僧」のコラムを元にリライトを加えたもので、1988年から最近までの主要な連続ドラマを77本、俎上にあげ「批評」を加えている。
 帯には「鋭すぎる評でテレビ界から圧殺された問題コラム」と記されているように、連載中はテレビの現場の関係者からは反論も寄せられたそうだ。
 実際に読んでも著者自身のドラマに対する感想が率直に語られていて歯に衣着せぬそのスタンスにどんどん読まされる本である。
 すでに一定の評価を受けている書物だけに以下の寸評はどちらかというと辛口に記させていただいた。ご容赦願いたい。

 いきなり些末な部分だけど、77本がセレクトされて著者の「批評」が記されているのだが、これが連載当時のものではなく、リライトされているという点が残念。本文は連載当時のままの文を載せ補筆の形で現在の著者の認識をコメント的に補ってほしかった。修正は単純な誤り等、最小限の範囲にとどめてほしかった。現在の形だと当時の評価をこっそり変えている作品があるんじゃないかという疑いを生む。
 あと、この77本のセレクトがよく分からない。別にそれ自体は構わないのだけど、例えば『東京ラブストーリー』が77本の中にセレクトされていないのにところどころ、他のドラマを語る箇所で『東ラブ』を揶揄している。…一定の評価が定まったヒット作に対しては、遠回しの批判ではなく、あえて正面切ってセレクトした上で批判を行って欲しかった。

 オビには「日本初のドラマ批評本」と書かれているが果たしてそうなのか?まずこれまでにもドラマ批評本はあったような気がする。そしてこの本が果たして「批評本」なのかどうなのかというところが気になる。ドラマについて書かれた本であることが確かなのだけど、それが批評かどうかは判断の分かれるところだろう。少なくとも私が認識している「批評」の概念ではなさそうな気がする。私なりに理解している「批評」は、まずその前提として、対象を論理的に語るものであること。簡単にいうと、個人的に嫌いなドラマであっても良いドラマであれば結論としては誉めるということ。それが批評であり批評家の行う行為だと思っている。そこが批評と感想の違いではないか。

(やや脱線するけど、批評家の巧拙は、論理的な批評の中にいかに自分自身の嗜好をにじませて血の通った文章にするかだと思う。例えば、私が好意を持っている批評に双葉十三郎氏の戦後日本映画批評があるが、その点、実にバランスがうまくとれていた。個人の嗜好だけで出来不出来を語らないが、語れないつらさが行間ににじみ出て、「ああ、この映画は酷評しているけど双葉氏は好きなんだなぁ」というのが分かってきて、その映画を見たくなったものだ。)

 要するにこの本は、著者が、自分の好きなドラマを誉めて、嫌いなドラマを批判している本ということになる。
 別に批評本でないといって本書の価値は落ちるものではない。むしろ私はドラマ評論と称する文章は嫌いで、ドラマの感想に好意を持っているほどだ。しかし帯に「ドラマ批評本」と書かれているので単純にその位置づけにひっかかった。 (麻生和也氏自身、以前は「ドラマ評論家」だった肩書きを、1997年に「ドラマ愛好家」に変えている。)

 以上、やや辛口だが、ここに記したプロセスを見てもおわかりのように、この本を読むと読んだ者のドラマのスタンスをイヤでも問われているような思いに捉えられる。そこがスバラシイ。
 ドラマをはじめとした映像作品、劇作に一定の見識を持って自分なりの価値観で主体的に見ている人が読んで、改めて自分のドラマに対する価値観を再確認するために好適な書だといえる。これだけ読み手が自身のドラマに対するスタンスを再確認させてくれる本はない。それだけスゴイ本だと思える。(2001.01.14.)

★作者・麻生和也(あそう・かずや)プロフィール

◇ドラマ愛好家。
◇1964年広島県出身。
◇中学生の時、宮崎駿演出の『未来少年コナン』で映像作品に目覚める。
◇高校から浪人、大学生時代にかけては、映画にハマった。和洋新旧問わず手当たり次第に見たが、特にハリウッドクラシックを追いかけて映画館めぐりを繰り返し、作者なりに「フィクションの見方」を身につけた。
◇この間、山田太一脚本の『男たちの旅路』でテレビドラマの魅力を知る。
◇1987年頃から、映画館が娯楽施設としては不愉快な場所であることと、新作映画の内容の乏しさのせいで映画館から足が遠のき、テレビドラマの魅力にどっぷり浸る日々が始まる。
◇1991年から「TVステーション」で「快傑ドラマ小僧」の連載を始める。その後、頼まれれば各誌に雑文を書き、「テレビドラマ評論家」を自称する。
◇1994年から、「TVぴあ」の年間ベストテン選考に加わる。
◇1997年、『名探偵・保健室のオバさん』を最終回に、「快傑ドラマ小僧」の連載終了(連載回数148回)。この頃から、「テレビドラマ評論家」と称するのをやめ、「テレビドラマ愛好家」になり、現在に至る。
◇敬愛する映画人 ビリー・ワイルダー、アルフレッド・ヒッチコック、フレッド・アステア、市川崑。
(以上、「快傑ドラマ小僧」(二見書房刊より引用)


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