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「時間ですよ」を作った男 久世光彦のドラマ世界

加藤義彦著、双葉社刊


2007.03.20発行
定価:1,500円(税別)
発行所 双葉社
 
ISBN978-4-575-29954-0

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「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」等、一世を風靡したTBSの人気ドラマ群。それを演出した故・久世光彦氏に生前インタビューした内容を収録。当時のエピソード、自身の作劇術、「笑い」へのこだわり等々、興味深い話をスチール写真と共に綴る一冊。

 昨年亡くなられた久世光彦氏のドラマ世界は独特のものでした。本著は生前から久世氏と親密な聞き取りを行っていた加藤義彦氏が一冊の本にまとめたもの。
 1970年代、TBS社員時代だった久世氏がベースとして活躍していた「水曜劇場」の諸作品、とりわけ代表作ともいえる『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』『ムー』『ムー一族』を詳細に解説し、その魅力を伝える。
 大物ディレクターだった久世光彦氏の功績を語る意味で貴重な一冊で「正史」として読ませる内容です。とりわけ70年代の諸作の魅力を文字でうまく伝えることに成功しています。ドラマ好きの方はぜひご一読いただきたいと思うオススメの一冊です。

 いい出来映えの書物ゆえ、敢えて欲を申し上げますと、あくまで「正史」なんですね。裏面が描けていないのですね。放つ作品が次々とヒットして時代の寵児ともいわれた時期 、暴走し批判を受けたこと、TBSを辞めるきっかけとなったトラブルなど、一部で知られる事柄についてまったく語られていない。また、本書で「笑い」を生むためと 説明されている新人女優への過剰なシゴキの問題。あれは「笑い」を生むためというより、久世氏の性癖を仕事の形で実現させていた面があるように思う。そういう偏執的ともいえる過度なシゴキの事実がほとんど語られていない のはもったいない。
 決して単なるスキャンダル的な意味合いで書いて欲しいというわけで はありません。芸術の領域で一つの頂点を極めるには当然のことながらその人の持つ狂気がなければ突き抜けられない一点があるように思います。ところが企業の社員としての規律ある生き方とそれはどこかでコンフリクトしてしまうものであり、そのあたり、TBSを辞めるにいたった前後のいきさつは作家・久世光彦として非常に重要な分水嶺だったはずでして、そのあたりに本著は残念ながらたどり着けていないように思え るのです。 よく出来た書物ゆえ、そこが非常に惜しい気がしております。
 これらは久世氏から信頼されていて久世氏と懇意だったから書けなかったのでしょう。それはやむを得ないものなのかも知れません。いずれ誰かがそういう久世氏のもう一つの面も語る必要があるような気はいたします。逆に言えば正史だけでここまで読ませるのはさすがだとも言えるわけです。
 また、初期の作品に焦点を絞りすぎて、その後、復活した向田邦子シリーズに関する記述がやや簡単すぎるのもちょっと残念。

 と、まぁいろいろと残念な点をついつい挙げてしまうのは本書が良くできているゆえの無い物ねだりの面は否めないのですが。

 余談ですが、やはりこの手の本では誤植も少なくありません。いちいちメモって読んでいたわけではありませんので読み終わって覚えている箇所は少ないですが、ところどころありましたね。
 読了しても覚えている本書における「疑問?」は以下の箇所。

★36ページ
 「TBS「水曜劇場」シリーズの全ドラマ一覧」として1961年の『純愛シリーズ』から1982年の『結婚』までを「水曜劇場」として紹介しています。
 しかし、実際の「水曜劇場」と呼ばれる番組枠は、1969年10月の『甘柿しぶ柿つるし柿』からスタートしたものなのです。この『甘柿…』がはじまる日の新聞には、TBSによる広告に「「水曜劇場」第1作」と大きく書かれてあります。ところが、本書ではそれよりも8年以上遡るドラマから「水曜劇場」として一覧に加えているのです。
 これは、2003年にリリースされたCD「TBS水曜劇場の時間ですよ」のライナーでも同様の内容となっていまして、この点について私は誤りではないかと指摘していました。
 この点について、本書では、一覧が掲載されている36ページの下に小さく「なお「水曜劇場」という名前は、もともと制作スタッフが使っていた俗称で、1969年ごろから一般にも広まった」と一応、補足してあります。しかしこれだけの記述 では説明不足だと思えます。1969年10月にTBS自ら「水曜劇場」の開始を高々と宣言しているのです。ですからそれ以前の作品を「水曜劇場」と称するのは適切ではないと思うのです。まぁ、広めに掲載しているのだから問題ないといえばないのですがこのあたり、データベースを運営している私としては曖昧にすますわけにいかないのです。

★74ページ
本文:『時間ですよ』はリメイクであり、向田邦子ほか数名の作家が、交代で脚本を書いた。かたや『寺内貫太郎一家』は向田のオリジナル。しかも彼女は1人で全39回を書ききった。
→これは誤りでは?『寺内貫太郎一家』の第1シリーズでも全39回のうち、第6回を向田邦子ではなく福田陽一郎が担当したと思います。(本書では他の箇所でも向田邦子が『寺内貫太郎一家』を第2シリーズ最終回以外、すべて執筆したと書かれているところがあり、筆者自身、完全にそう思っている形跡があります。)

★148ページ
本文:その3年後に、学園ドラマ『翔んだライバル』が毎週、番組のおしまいに出演者の出したNG画像を流して大好評。
→これもヘンでしょう。『翔んだ』シリーズの第1作は『翔んだライバル』ではなく『翔んだカップル』でNG集を流して最初に好評を博したのは第1作『翔んだカップル』のほう。

★148ページ(下段の『翔んだライバル』に関する注釈部分)
本文:主演は『ムー一族』でデビューした桂木文。彼女の人気もあって、のちに番組はシリーズ化された。
→桂木文が主演したのは、『翔んだライバル』ではなく『翔んだカップル』だと思われます。

(2007.04.08古崎康成)


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